【カフカの箴言55】勝利するためだと言って、人も世界も騙してはいけない
【原文】
Man darf niemanden betrügen, auch nicht die Welt um ihren Sieg.
【和訳】
人は誰をも騙してはならない、また世界をも騙してはいけないことは同様である。世界が勝利することと引き換えにしてでも騙すこともしてはいけないのだ。
【解釈と鑑賞】
前回の箴言と同じ流れの中にある、同じ文脈の中にある箴言です。
前回の箴言とは、何か逆のような箴言に思われます。
即ち、世界との戦いにあっては、世界を支持せよという命令形の前回の文と、今回の、世界の勝利と引き換えにしても世界を騙すなという文との関係は如何なるものでしょうか。
このとき、わたしが若いときに読んでこころに残っているカフカの言葉あります。
それは、勝たなくても良いのだ、負けなければ良いのかという言葉です。
この言葉は、わたしの人生ん折に触れて、こころの中に思い出された言葉です。
これは、今回の箴言に通じているカフカのこころでありませう。
この箴言をあらためてよみますと、何か世界というものとの道徳や倫理をカフカは言っていると思います。
そうして、問題なのは、何か具体的な個々のあのひとこのひと、あの社会、この社会というのではなく、非常に抽象的に、すべてをひっくるめて、風呂敷に包むように、世界と言っていることなのです。
これは、むしろカフカの、何かの理由による苦しさ、生きることの苦しさであるのかも知れません。
この箴言を文字にしたカフカの年齢が知りたいものです。
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