2015年1月17日土曜日

【カフカの箴言53】蛇と天使と 悪と善と



【カフカの箴言53】蛇と天使と 悪と善と

【原文】

Es bedurfte der Vermittlung der Schlange: das Böse kann den Menschen verführen, aber nicht Mensch werden.


【和訳】

蛇の仲介が必要だった。即ち、悪は、人間を誘惑することができる、しかし、人間になることはできない。


【解釈と鑑賞】

これは、カフカの現実認識を示している。蛇が仲介であり、媒介者であるということを、このドイツ語で、die Vermittelungという言葉を選択するカフカの日常は、実に苦しいものであったにちがいない。

なぜならば、自分は空であり、虚であることの認識が自分にあったからである。もちろん、これが心地よいという人間もいるのだ。

しかし、今まで読んできたカフカの箴言をみると、この人間はそうではない。

この箴言を次のように言い換えると、カフカのことが、よくわかるのではないだろうか。

天使の仲介が必要だった。即ち、善は、人間を誘惑することができる、しかし、人間になることはできない。

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