【ショーペンハウアーの箴言9】
【原文】
Das Genie wohnt nur eine Etage höher als der Wahnsinn.
【和訳】
天才とは、狂気よりもただ1階層分だけ上に住んでいる人間のことである。
【解釈と鑑賞】
これも、ショーペンハウアーらしい箴言です。
日本語ならば、天才と気違いは紙一重というところでしょうが、日本語のように並列、並置ではなく、垂直方向に立てて、天才と狂気の関係を述べています。
この一行の意味は、天才は狂気をそのうちに抱いている者だという意味でもありましょう。それは、ショーペンハウアー自身のことでもあるということができます。
意志と表象としての世界全4巻を最後迄読んで、一番最後にただ一言、Nichtsと書き付けたショーペンハウアーに驚いたわたしは、この人間が何故この浩瀚な体系的な書物を書いたのか、その理由が解りました。たったこのNichts、無という言葉を最後において、それまで叙述して来た宇宙も、その森羅万象もすべては無だと言いたいがために、書いて来たのだということなのです。
これは、普通のひとにはなかなかできないことでしょう。
Der Wahnsinnを、狂気と訳しましたが、それを譬喩(ひゆ)ととって、狂人と訳しても、いいと思います。しかし、狂気の方が、更に生々しい感じが致します。
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