2014年5月31日土曜日

【カフカの箴言18】悪の前の秘密


【カフカの箴言18】


【原文】


Lass dich vom Bösen nicht glauben machen, du könntest vor ihm Geheimnisse haben.



【和訳】

お前に悪を思わせるようなことはしないようにせよ、お前が悪を前にして秘密を持つことができるかも知れないなどというようなことは。



【解釈と鑑賞】


これも、自分への戒めの言葉のように思はれます。


悪を意識して、秘密を持たうということそのことが、既に悪なのだといふことでせう。

【ショーペンハウアーの箴言18】古典的3大職業からみた人間


【ショーペンハウアーの箴言18】




【原文】

Der Arzt sieht den Menschen in seiner ganzen Schwäche, der Advokat in seiner ganzen Schlechtigkeit und der Priester in seiner ganzen Dummheit.


【和訳】


医者は、人間をみるに、その全くの弱点を見、弁護士は、人間の全くの悪を見、そして、僧侶は、人間の全くの愚かさを見るのである。


【解釈と鑑賞】

この箴言の背景にあるのは、世界の古典的な三大プロフェッション(職業)という考え方です。これは、白人種の世界のものでせう。

それが、この箴言に名前の挙げられている3つの職業なのです。

そうして、それぞれのプロフェッションが、何をその職業において見るのか、病気ならば治癒するのかを述べております。

こうしてみると、人間とは、弱く、悪であり、愚かであるということになります。




2014年5月24日土曜日

【カフカの箴言18】


【カフカの箴言17】




【原文】


Wenn es möglich gewesen wäre, den Turm von Babel zu erbauen, ohne ihn zu erklettern, es wäre erlaubt worden.



【和訳】

もしバベルの塔を、塔を登らずに、建設することが可能であったならば、それは許されたことであらう。



【解釈と鑑賞】

カフカといふ人は、接続法II式、英語でいふ非現実話法を用ゐて、よくこのやうな寸言を書いています。


確かに、その通りです。あり得ない世界の話でありますから。

【ショーペンハウアーの箴言17】成熟と認識


【ショーペンハウアーの箴言17】




【原文】

Bei reiferer Erfahrung sehen wir die Unbiegsamkeit der menschlichen Charaktere ein, wie kein Flehen, noch Vorstellen, noch Beispiel geben, noch Wohltun sie dahin bringt, von ihrer Art zu lassen, sondern vielmehr ein jeder seine Handlungsweise, Denkungsart und Fähigkeit mit der Notwendigkeit eines Naturgesetzes durchführen muss.


【和訳】


経験がより成熟すると、人間の多くの性格のどうしようもない頑固、意固地を洞察して、(その本質を)見抜くことになり、それはどのような洞察かと言へば、懇願しても、想像しても、例を示しても、善行を為しても、この頑固、意固地を変えて、そのやり方を放棄させることには至らずに、さうではなくて、それどころかむしろ、人間の性格といふものはどの性格であつても、その行為の仕方を、思考の方法を、そして能力を、ある自然の法則の必然性によつて遂行せずにはゐられないといふことなのである。


【解釈と鑑賞】

ショーペンハウアーが、その「自然の法則の必然性」を何だと論じ、どのようなものであるのかを論じたのが、主著『意志と表象としての世界』です。

埴谷雄高は、この法則の外に出たいと願って、『死霊』を書いた。安部公房もまた、この法則の外に出たいと願って、すべての主人公の願う消極的な脱出、即ち失踪を描いた。



2014年5月17日土曜日

【カフカの箴言16】呼吸と場所


【カフカの箴言16】


【原文】


An diesem Ort war ich noch niemals: Anders geht der Atem, blendender als die Sonne strahlt neben ihr ein Stern.



【和訳】

この場所に、わたしは今迄一度も来た事がなかった。即ち、違った風に、呼吸をし、それは、太陽が自分自身の他に一個の星を照らす以上に輝いていたのだ。


【解釈と鑑賞】


この箴言は、意味深長です。カフカが実際に経験したことを、そのまま書いたものだと思われます。

カフカに、この場合特徴的なことは、この出来事、この経験を

1。場所の問題としてとらえていること。
2。呼吸の問題としてとらえていること。
3。呼吸が変われば、人間という小さな生き物が、太陽という恒星に匹敵する輝きを、それもこの圏内のすべての星を照らすのではなく、一個の星を(それ以外に)照らすということ。

このようなことになるでしょう。


これが、何を意味するのか。考える時間は貴重だと思います。

【ショーペンハウアーの箴言16】阿呆と賢者


【ショーペンハウアーの箴言16】


【原文】


Der Tor läuft den Genüssen des Lebens nach und sieht sich betrogen. Der Weise vermeidet die Uebel.


【和訳】


阿呆は、人生の享楽を追いかけて、騙されたと思うのだ。賢者は、その悪を回避する。



【解釈と鑑賞】



阿呆者と賢者の違いを示した一行。

2014年5月10日土曜日

【カフカの箴言15】鳥籠と鳥の関係



【カフカの箴言15】


【原文】

Ein Käfig ging einen Vogel suchen.



【和訳】


一つの鳥籠が、一羽の鳥を探しに行った。



【解釈と鑑賞】


たった一行の箴言です。

自由に空を飛ぶ鳥が、ではなく、その鳥を、鳥籠が探しに出たというのです。

先入見で持っている主語と述語の関係をひっくり返したら、どうなるかという一行の、見本です。

曰く、監獄、牢獄が、一人の人間を探しに行った。

人間が自由であれば(鳥のように)、監獄は求めないでせう。しかし、実体はだうでありませうか。

といふことを考へさせる一行です。



【原文】

Ein Käfig ging einen Vogel suchen.



【和訳】


一つの鳥籠が、一羽の鳥を探しに行った。



【解釈と鑑賞】


たった一行の箴言です。

自由に空を飛ぶ鳥が、ではなく、その鳥を、鳥籠が探しに出たというのです。

先入見で持っている主語と述語の関係をひっくり返したら、どうなるかという一行の、見本です。

曰く、監獄、牢獄が、一人の人間を探しに行った。

人間が自由であれば(鳥のように)、監獄は求めないでせう。しかし、実体はだうでありませうか。


といふことを考へさせる一行です。

【ショーペンハウアーの箴言15】人生は糞まみれだ


【ショーペンハウアーの箴言15】


【原文】

Das Leben gleicht einem Kinderhemd: Es ist kurz und beschissen.


【和訳】


人生は、一着の子供のシャツに似ている。即ち、短くて、且つ大小便で汚れて、不快である。


【解釈と鑑賞】


これもショーペンハウアーらしい箴言です。

ショーペンハウアーの使う譬喩(ひゆ)は、まことに的確で、正鵠を射ています。

譬喩の達人というべきです。名人といふよりも、やはり一刀両断する鋭さがあるので、達人といふべきでせう。

人生が、大小便の糞尿まみれであるというは、実に辛辣であり、苛烈な譬喩だと思います。ほとんどの人間は、人生を美しく飾りたがるからには。ドイツ語のbeschissenという過去分詞は実によく効いている。


2014年5月3日土曜日

【カフカの箴言14】道と落ち葉


【カフカの箴言14】


【原文】

Wie ein Weg im Herbst: Kaum ist er rein gekehrt, bedeckt er sich wieder mit den trockenen Blättern.



【和訳】


秋の一本の道のように。即ち、その道が方向を転換して内側に向くや否や、それは、再び乾いた葉っぱによって、我が身を覆うのである。


【解釈と鑑賞】


これは、カフカの書いた詩であるようにおもはれる。

秋とはどのような季節であるか、道とは何か。道が内側を向くとはどのようなことであるのか。そのような道は、必ず落ち葉が落ちて来て、我が身を落ち葉の下に埋もれて隠すこととになる。これは、何を言っているのか。


こうしてみると、これは、この道とは、カフカ自身のこころのことを言っているように見えます。多分、間違っていないことでせう。

【ショーペンハウアーの箴言14】苦痛と退屈


【ショーペンハウアーの箴言14】


【原文】

Kommt zu einem schmerzlosen Zustand noch die Abwesenheit von Langeweile, so ist das das irdische Glück im Wesentlichen erreicht, denn das Übrige ist Schimäre.


【和訳】


ある苦痛の無い状態にあって、依然としてまだ、退屈が現れないとしたならば、それは、本質的に、地上の幸福が達成されたということなのだ。それというのも、その他のことは、妄想であり、架空のことであるからだ。


【解釈と鑑賞】


これもショーペンハウアーらしい箴言。

苦痛がないのに、退屈が来ないというのは、理想の状態ということでしょう。普通は、退屈になると言っているのです。

それ以外のことのそれとは、何を指しているのかというと、かうしてみると、苦痛がなくて、しかも退屈ではない状態、即ち、無ということではないでせう。