2014年1月25日土曜日

【カフカの箴言1】


【カフカの箴言1】


【原文】

Der wahre Weg geht ueber ein Seil, das nicht in der Höhe gespannt ist, sondern knapp über dem Boden. Es scheint mehr bestimmt stolpern zu machen, als begangen zu werden.


【和訳】

本当の道というものは、一本の綱の上を行くものであって、その綱は高いところには張られていず、地面ぎりぎりに張られているものなのだ。道は、その道を踏破するというようよりは、むしろ、間違いなくけつまづかせるように見える。


【解釈と鑑賞】

この道は、いかにもカフカらしい。

普通ひとは、大言壮語風に、ようしこの道を極めるぞとか、千万人行かぬとも我唯一人行かむとか、何かこう難しく、難儀で、悲憤慷慨の体を連想させますが、カフカの道は実に平凡で日常的で、ありきたりの、何の変哲もない道です。

綱のようなものがという着想が、一本の道を連想させて秀逸ですが、それを高いところには張っていないのだと言って、読者の連想を引っくり返し、地面にあって、ひとをこけさせるものだというのは、いや、多分これはカフカは皮肉とすら思っていなかったことでしょう。

平々凡々たる事実の道、道の事実について語ったものでありましょう。


【ショーペンハウアーの箴言1】


【ショーペンハウアーの箴言1】


【原文】

Gesundheit ist nicht alles, aber ohne Gesundheit ist alles nichts.


【和訳】

健康はすべてではない、しかし、健康がなければ、すべては、ない。


【解釈と鑑賞】

わたしは何故か子供のころから、格言や箴言が好きで、英語を学び始めた中学生のころから既にそうで、小さな英語の格言集を買って、繰り返し読んだことを思い出します。

この癖(へき)は、日本語の世界でも同じですので、そうしてみると、やはり、外国語とは言わず、言語と格言、言語と箴言ということで、何かわたしには理由のある意義深いものが、どこかにあるのだということになります。

今回から毎週末に、1つづつ、わたしの好きなショーペンハウアーの箴言をあげ、そして訳と解釈を施すことに致します。

第一回のこれは、言うまでもなく、解釈するまでもないことでしょう。

週明け早々にわたしは入院する予定なのですが、そのような身である者にとっては、その直前の箴言としては、格好の贈物ということになります。

格言や箴言のよさは、何ごともよきものはそうですが、年月とともに、その意義深さ、意味深さがこころに響き、納得を以て理解されるようになるということです。

若い人がこの箴言を読めば、当たり前と思う事でしょうが、老いつつあることを自覚した人間が読めば、それは死を考え、如何にその到来を先延ばしにするか、そのために健康を大切にするかという切実な話になります。