2014年7月26日土曜日

【カフカの箴言26】否定と肯定、課題と所与



【カフカの箴言26】


【原文】


Das Negative zu tun, ist uns noch auferlegt; das Positive ist uns schon gegeben.


【和訳】

消極的なこと、否定的なことをすることは、わたしたちに、これから、課せられるのであるが、これに対して、積極的なこと、肯定的なことは、わたしたちには、既に、与えられているのである。


【解釈と鑑賞】


これも何を言ひたいのでせうか。



含みの多い一行です。

【ショーペンハウアーの箴言26】名声と忘却


【ショーペンハウアーの箴言26】




【原文】

Der Ruhm mag verschwinden, die Vergessenheit währt ewig.




【和訳】


名声は消滅するかも知れないが、忘却は永遠に続く。


【解釈と鑑賞】


この箴言は、奥深いものです。

名声が世俗の儚い、流行のことであれば、これに対して、忘却といふことは、永遠に継続するといふのです。

もしこの世が永遠に時間の中にあるやうに見えてゐるとしたら、それは、深い忘却の上に、この世が成り立ってゐるといふことを、この一行は、意味してをります。


2014年7月19日土曜日

【カフカの箴言25】隠れ場所と救済


【カフカの箴言25】隠れ場所と救済


【原文】


Verstecke sind unzählige, Rettung nur eine, aber Möglichkeiten der Rettung wieder so viele wie Verstecke. Es gibt ein Ziel, aber keinen Weg; was wir Weg nennen, ist Zögern.


【和訳】

しかし、隠れ場所は、またもや(いつだって)隠れ場所の数だけ沢山ある救済・救助の可能性であり、救済・救助だけが唯一の(救助・救済の)可能性なのだ。ひとつの目的地があるのだが、しかし、道がないのだ。われわれが道と呼んでゐるものは、躊躇なのである。


【解釈と鑑賞】


この最初の一文は、構造が複雑で、それだけ何か本質的な内容と、カフカの本質的な思考方法を表してゐると考へることができます。

最初の文を分解すると次のやうになります。

Verstecke sind unzählige Möglichkeiten der Rettung…..(A)
(隠れ場所は、救済・救助の数えきれない可能性である)
Rettung is nur eine Möglichkeit der Rettung….(B)
(救済・救助は、救済・救助の唯一の可能性である)

隠れ場所に身を隠すと救われる。といふ考へがある。そして、救はれることだけがそれ自体の唯一の可能性である。

この論理だけでも相当難しいやうに思はれる。

身を隠すとは、躊躇することだと言つてゐるのだらう。そして、それは目的を定めて道を行くことでは全くない。

それは、むしろ道を行き、進むのではなく、そこに留まることだ。

それでは、カフカはどのやうに生きようとしたのだらうか。といふことを思はしめる箴言です。逆の場合を考へることができます。とすれば、それは随分と苦しい人生であつたことでせう。










【ショーペンハウアーの箴言25】音楽と建築様式


【ショーペンハウアーの箴言25】




【原文】

Architektur ist erstarrte Musik.



【和訳】


建築様式は、凝固した音楽である。


【解釈と鑑賞】


これもまた、註釈不要の箴言ではないでせうか。


即ち、音楽は立体的な構造を備へてゐるといふことでせう。そして、時間の中を流れてゐる。

ショーペンハウアーは、その主著『意志と表象としての世界』の中で(第三巻)、繰り返し、音楽は宇宙の根底の音であり(特にバスの音は)、説明不可能で、従い自明であるほど人間に宇宙の本質を語りかける藝術だと述べてをります。







2014年7月12日土曜日

【カフカの箴言24】世界へと逃げる?


【カフカの箴言24】


【原文】


Wie kann man sich über die Welt freuen, ausser wenn man zu ihr flüchtet?


【和訳】

だうやって世界が喜ばしいものだと思うことができるか?そこに逃げるといふこと以外に。


【解釈と鑑賞】


わたしたちは世界の中に逃げているといふ認識があるのでせう。

といふことは、この文を書いたカフカは、その外へ出たいと思ったということでもあります。

世界の外に出ると、それでは世界に歓びを感ずることができるのかという問ひには沈黙してゐる、この行間の意味が、如何にもカフカらしいと思ひます。




【ショーペンハウアーの箴言24】人生とは如何なるものか


【ショーペンハウアーの箴言24】




【原文】

Es ist wirklich unglaublich, wie nichtssagend und bedeutungsleer, von aussen gesehen, und wie dumpf und besinnungslos, von innen empfinde, das Leben der allermeisten Menschen dahinfliesst. Es ist ein mattes Sehnen und Quälen, ein träumerisches Taumeln durch die vier Lebensalter hindurch zum Tode, unter Begleitung einer Reihe trivialer Gedanken.



【和訳】


外側から眺めて、如何に何も意味するところなく空虚でに、また内側から眺めて、如何に鈍くまた無思慮無分別に、ほとんど総ての人間の人生が彼方へと流れて行くものかは、実際信じ難いことである。その人生とは、4つの人生の段階を通じて死に至る、一連の些事に拘泥した考えが同伴された、生気のない、惚(ぼ)けた憧れと苦しみであり、夢見がちな酩酊の千鳥足なのである。


【解釈と鑑賞】


註釈不要の箴言では、ないでせうか。




2014年7月5日土曜日

【カフカの箴言23】幸福とは何か


【カフカの箴言23】


【原文】


Das Glück begreifen, dass der Boden, auf dem du stehst, nicht größer sein kann, als die zwei Füße ihn bedecken.


【和訳】

幸福を理解すること、即ち、お前の立っているその地面は、二つの足が覆つてゐる地面よりも大きくはないのだといふこと。(これを知ることが幸福だといふこと。)


【解釈と鑑賞】

全くその通りの一行です。多言は無用かとおもひます。





【ショーペンハウアーの箴言23】贅沢品をどう観るか


【ショーペンハウアーの箴言23】




【原文】

Sokrates sagte, beim Anblick zum Verkauf ausgelegter Luxusartikel: “Wie vieles gibst es doch, was ich nicht nötig habe”.



【和訳】


ソクラテスが、展示されている贅沢品を販売するのをみて、かう言った:「しかし、一体、どれだけ多くのものが、わたしの必要としないものなのか」と。


【解釈と鑑賞】


註釈不要の箴言では、ないでせうか。

ソクラテスのアイロニーといふならばいふことができませう。反対からものを観るといふことです。