【カフカの箴言64】
【原文】
Die Tatsache, daß es nichts anderes gibt als eine geistige Welt, nimmt uns die Hoffnung und gibt uns die Gewißheit.
【和訳】
精神的な世界以外のものはないという事実、この事実は、わたしたちから希望を奪い、そして、わたしたちに確信を与える。
【解釈と鑑賞】
カフカらしい箴言です。
この一文のカフカらしさは、この事実が希望を奪うものであるといっているところで、普通は、精神世界は希望を与えるのではないかと思います。
しかし、その辛さは希望を逆に与えない、与えないどころか奪ってしまう。
しかし、同じこの事実が、確信を与えるのだという。
この論理展開、二つの奪うと与えるという文の接続が、いかにもカフカらしいと思います。
この場合、確信と訳したドイツ語は、確実性という意味です。その方が意味の通る訳かもしれません。