【カフカの箴言76】
【原文】
Dieses Gefühl : 》hier ankere ich nicht《− und gleich die wogende, tragende Flut um sich fühlen!.
【和訳】
この感情:”ここを水浸しにしてなるものか”、そして直ちに、自分の周りに大波が波打ち、ひとを攫(さら)つて行く洪水を感じるのだ!
【解釈と鑑賞】
さう思つたら、そのやうになるといふ教訓でありませうか。
ankerenという綴りは、Ankernと解して、さう訳しました。
そうであれば、その後の洪水の喩えにつながることができます。
”ここを水浸しにしてなるものか”と訳しましたが、
”わたしだつたら、ここを水で一杯にすることはない”といふ訳もあると思ひます。
ここを水で一杯にする、といふ此の感覚、これが日本人には一寸ぴんと来ないやうに思ひますが、如何でせうか。
他の用例をも見てみますと、自分が何かそちらの方に向かふ、身を振り向ける、お願いをする、声に出しておーいと呼びかけるといふ意味であることが判ります。
としてみれば、ここでは、そのやうな行為をしないといふ意味の過カフカの箴言であります。
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