2014年9月6日土曜日

【カフカの箴言32】鶴が天に飛翔することの意味は?



【カフカの箴言32】


【原文】


Die Krähen behaupten, eine einzige Krähe könnte den Himmel zerstören. Das ist zweifellos, beweist aber nichts gegen den Himmel, denn Himmel bedeuten eben: Unmöglichkeit von Krähen.


【和訳】

鶴たちは、こう主張する。唯一の、比類なき鶴であれば、天を破壊することができるかも知れないと。これは、疑いないことだが、しかし、天に対して何も証明するものではない。というのも、天とはまさしく次のことを意味するからである:鶴たちの持つ不可能性


【解釈と鑑賞】

カフカの住んだ土地にも、鶴がいたのだろうか。

或いは、いなかったとしても、鶴をどのように考えていたかを考えることはできる。

わたしにとっての鶴の形象(イメージ)は、美しい鳥であるというもので、破壊とは無縁の鳥だが、カフカにとっては、どうも少し違うようである。

天を、或いは天国を破壊すると考える鶴なのだ。

ここで、わかることは、カフカの鶴とは、

1。天高く飛べるということ
2。破壊する能力を持っていること

このふたつが、鶴という言葉の中にあるということだ。

カフカがここで言っていることは、何か働きかけようというその対象に対して、その働きかける者は、それが正しいことだと証明しなければならないということである。

鶴にはそれができない。何故ならば、天高く飛ぶということ、その能力そのものが、鶴たちのその能力の無さ、鶴達の不可能性を意味しているからだ。

これは、地上のわたしたちに、翻って、この考えを適用することができる。

地上に人間がいようとすることそのことが、既にそうしていることの無意味、不可能性を示しているのだということになるだろう。

カフカというひとのものの考え方の好適な例が、この箴言だと思う。


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