2014年9月20日土曜日

【カフカの箴言34】カフカと漆喰



【カフカの箴言34】


【原文】


Sein Ermatten ist das des Gladiators nach dem Kampf, seine Arbeit war das Weißtünchen eines Winkels in einer Beamtenstube.


【和訳】

彼の疲弊は、闘いの後の(ローマ時代のあの円形劇場で戦った)戦士の疲弊であり、その仕事(労苦)は、役人の部屋の中にある一角の(石灰などで塗った白い)一寸した漆喰だったのだ。


【解釈と鑑賞】


何か、カフカが昼間の生業で仕事に疲れ果てたときに書いた箴言のように読めます。

二つ目の文からは、一生懸命問題の解決に努力したが、結局それは、全体のよく見えない、部屋の角の漆喰の、綻(ほころ)びを糊塗して一寸ひとのめにはわからなければよいという程度の修繕の、それも役人の部屋のそれだと言うのです。

カフカが保険の手続きのために、プラハの役所に行くと、役人の坐っている部屋(個室)には、よくそんな漆喰塗りの跡があったものでしょう。

この二行目には、自分もそのような役人になってしまっているのかという感懐、静かな嘆きと、また自分はそんな漆喰のような存在であるのか、一時凌ぎの解決のための、という、これもまた静かな嘆きの声でありましょう。




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