2014年8月16日土曜日

【カフカの箴言29】悪と鞭



【カフカの箴言29】


【原文】


Die Hintergedanken, mit denen du das Böse in dir aufnimmst,
sind nicht die deinen, sondern die des Bösen. Das Tier entwindet dem Herrn die Peitsche und peitscht sich selbst, um Herr zu werden, weiss nicht, dass das nur eine Phantasie ist, erzeugt durch einen neuen Knoten im Peitschenriemen des Herrn.



【和訳】

お前に下心があって、その考えで悪をお前の中で受け容れると、その下心は、お前の下心ではなく、悪の下心であるのだ。動物は主人から鞭を奪いとり、自分が主人になるために、自分自身を笞打つのだが、それでいて、それが単なる空想であることを知らないのであり、その空想は、主人の鞭の革紐にある新らしい結び目によって創造されるのだ。


【解釈と鑑賞】


悪についての思考が続きます。お前とあるので、これは自分自身に語りかける言葉として、カフカは書いたものでしょう。

或いは、誰か傍にいたひとの心の中を観察した結果を独語しているのでしょう。

自分が主人になるために、自分自身を鞭打つ」というのは、実に皮肉が効いています。

人の鞭の革紐にある新らしい結び目」が、誰によってつくられるのか、それともこの結び目も自分で我が身を鞭打つ空想によって生まれるものなのか、カフカは言っておりません。

今、ここまで書いて、あらためて原文を読みますと、「人の鞭の革紐にある新らしい結び目」は、そのような鞭の使いかたをすると、ひとりでにできるようにも読む事ができます。





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