【カフカの箴言25】隠れ場所と救済
【原文】
Verstecke sind unzählige, Rettung nur eine, aber Möglichkeiten der Rettung wieder so viele wie Verstecke. Es gibt ein Ziel, aber keinen Weg; was wir Weg nennen, ist Zögern.
【和訳】
しかし、隠れ場所は、またもや(いつだって)隠れ場所の数だけ沢山ある救済・救助の可能性であり、救済・救助だけが唯一の(救助・救済の)可能性なのだ。ひとつの目的地があるのだが、しかし、道がないのだ。われわれが道と呼んでゐるものは、躊躇なのである。
【解釈と鑑賞】
この最初の一文は、構造が複雑で、それだけ何か本質的な内容と、カフカの本質的な思考方法を表してゐると考へることができます。
最初の文を分解すると次のやうになります。
Verstecke sind unzählige Möglichkeiten der Rettung…..(A)
(隠れ場所は、救済・救助の数えきれない可能性である)
Rettung is nur eine Möglichkeit der Rettung….(B)
(救済・救助は、救済・救助の唯一の可能性である)
隠れ場所に身を隠すと救われる。といふ考へがある。そして、救はれることだけがそれ自体の唯一の可能性である。
この論理だけでも相当難しいやうに思はれる。
身を隠すとは、躊躇することだと言つてゐるのだらう。そして、それは目的を定めて道を行くことでは全くない。
それは、むしろ道を行き、進むのではなく、そこに留まることだ。
それでは、カフカはどのやうに生きようとしたのだらうか。といふことを思はしめる箴言です。逆の場合を考へることができます。とすれば、それは随分と苦しい人生であつたことでせう。
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