2014年4月12日土曜日

【ショーペンハウアーの箴言11】


【ショーペンハウアーの箴言11】


【原文】

Der Wechsel allein ist das Beständige.


【和訳】


交換、替わり、交替すること、或いは変化ということだけが、変わらぬ、不変のものだ。


【解釈と鑑賞】


ショーペンハウアーという人のものごとの本質を突いた箴言のひとつだと思います。

これは、この通りではないでしょうか、この世界の相というものは。これを仮に実相と呼ぶとすると、実相とは存在しない、無であると、ショーペンハウアーは言っているのです。

この哲学者の主著『意志と表象としての世界』の最後は、Nichtsという言葉、一言で終っております。延々と書いて叙述した宇宙と人間の絵巻の最後、これらすべては無だという結論に、この箴言の由来する思想があると思います。


この一行を味わえば味わうほど、ものごとの本質を実相として又仮相として見ることができる、試金石の箴言です。

2014年4月5日土曜日

【カフカの箴言10】


【カフカの箴言10】


【原文】

Die richtige Erklärung  ist aber die, dass ein grosser Teufel in ihm Platz genommen hat und die Unzahl der kleineren herbeikommt, um dem Grossen zu dienen.



【和訳】

しかし、本当の説明は、大きな悪魔が、彼の中に座を占めたということなのであり、そして、大きな悪魔に仕えるために、数限りないより小さな悪魔が、やって来るのということなのである。


【解釈と鑑賞】


しかし、という言葉が入っていますから、これは、何かその前に、既にあるあることを前提に、この文が綴られていることを示しています。

何があったのでせうか。

これもきっと、日常の瑣細(ささい)なことに、カフカが鋭敏に反応して生まれた一行なのでしょう。


【ショーペンハウアーの箴言10】


【ショーペンハウアーの箴言10】


【原文】

In Deutschland ist die höchste Form der Anerkennung der Neid.


【和訳】


ドイツにあって、認めるということの最高度の形式が、羨望なのである。


【解釈と鑑賞】


社会的な機会で、対象となる人物の素晴らしさをいうときには、Neid、羨望、neidisch、うらやましいなあという言葉を使って、そのことを言うことになるのでしょう。

誠に羨ましい限りであります。と、いったのでしょう。

その賛辞の呈し方に、ショーペンンハウアーは疑問を呈しているわけです。

これを、日本にと置き替えても、面白いかも知れません。


その根底にあるのは、嫉妬心でありませう。

2014年3月29日土曜日

【カフカの箴言9】


【カフカの箴言9】


【原文】

A. ist sehr aufgeblasen, er glaubt, im Guten weit vorgeschritten zu sein, da er, offenbar als ein immer verlockender Gegenstand, immer mehr Versuchungen aus ihm bisher ganz unbekannten Richtungen sich ausgesetzt fühlt.



【和訳】


Aは、非常に高慢ちきな人間であり、善において、ずっと先に進んだと思っている。というのも、この男は、明らかにいつも誘惑する側の対象として、いつももっと多くの誘惑に身を晒していると、本人にはこれまで全く見知らぬ方向から来るそのような誘惑を感じているからである。


【解釈と鑑賞】

カフカが、このような男をみて抽象化した箴言なのでしょう。

きっと、身近にいた人間に違いありません。しかし、この人間にとっては、カフカがVersuchungen、誘惑の数々と表したことを、実際には誘惑とは思っていないことでしょう。

むしろそうではなく、それを生きることだと勘違いしていると、カフカは言いたげです。

カフカの人生は、この人間とは全く逆の人生であったのではないかと推測します。

この箴言には、善とはそうではない、善とは何かを考えるカフカがおります。

誘惑ではないものには、どのようなものがあるのか、カフカに尋ねてみたいものです。


そうすると、カフカの禁欲的な面を知る事ができるでしょう。

【ショーペンハウアーの箴言9】


【ショーペンハウアーの箴言9】


【原文】

Das Genie wohnt nur eine Etage höher als der Wahnsinn.



【和訳】


天才とは、狂気よりもただ1階層分だけ上に住んでいる人間のことである。



【解釈と鑑賞】


これも、ショーペンハウアーらしい箴言です。

日本語ならば、天才と気違いは紙一重というところでしょうが、日本語のように並列、並置ではなく、垂直方向に立てて、天才と狂気の関係を述べています。

この一行の意味は、天才は狂気をそのうちに抱いている者だという意味でもありましょう。それは、ショーペンハウアー自身のことでもあるということができます。

意志と表象としての世界全4巻を最後迄読んで、一番最後にただ一言、Nichtsと書き付けたショーペンハウアーに驚いたわたしは、この人間が何故この浩瀚な体系的な書物を書いたのか、その理由が解りました。たったこのNichts、無という言葉を最後において、それまで叙述して来た宇宙も、その森羅万象もすべては無だと言いたいがために、書いて来たのだということなのです。

これは、普通のひとにはなかなかできないことでしょう。

Der Wahnsinnを、狂気と訳しましたが、それを譬喩(ひゆ)ととって、狂人と訳しても、いいと思います。しかし、狂気の方が、更に生々しい感じが致します。


2014年3月15日土曜日

【カフカの箴言8】


【カフカの箴言8】


【原文】

Er ist wie der Kampf mit Frauen, der im Bett endet.



【和訳】

彼は、寝床(ベッド)で終わる(果てる)女性たちとの戦いのようである。


【解釈と鑑賞】

この主語である彼がだれかはわかりません。いづれにせよ、女性との戦いをしている男性であるのです。

男性一般と解してもよいし、あるいは、この彼はカフカ本人だと解しても間違いではないかも知れません。

ベッドで終わるというのは、ベッドにまで共に至るとそこで戦いが終わるという意味でもあれば、また括弧の中に訳したように、男性が射精して終わるという意味もかけて読むこともできます。

この文の構文からだと、彼は戦いである(ようだ)という等式があり、とはいへ、この等式のありかたは、普通に考えて、何か一寸破格のところがあります。


【ショーペンハウアーの箴言8】


【ショーペンハウアーの箴言8】


【原文】

Genitalien sind der Resonanzboden des Gehirns.


【和訳】


生殖器は、脳の共鳴、共振、反響、同感の床どこ、基礎、土台である。


【解釈と鑑賞】


これも全くこの通りの箴言だと思います。Resonanzの訳語をみな一斉に充てがってみました。

理性の宿る脳味噌と、感性の極である生殖器と。生殖器が脳の基礎だというのが、いかにもこの哲学者、意思と表象の世界を説いた哲学者らしい。

生殖器があって、生命は繁殖するからですし、それによって個体が生まれ、それぞれの苦しみが、互いの意志との葛藤、衝突によって生まれるからであり、それゆえに、ものを思考するようになるからでしょう。体系だてて思考するのは、理性の働きです。