2015年2月7日土曜日

【カフカの箴言57】全ては嘘

【カフカの箴言57】全ては嘘

【原文】

Alles ist Betrug: das Mindestmass der Täuschungen suchen, im üblichen bleiben, das Höchstmaß suchen. Im ersten Fall betrügt man das Gute, indem man sich dessen Erwerbung zu leicht machen will, das Böse, indem man ihm allzu ungünstige Kampfbedingungen setzt. Im zweiten Fall betrügt man das Gute, indem man also nicht einmal im Irdischen nach ihm strebt. Im dritten Fall betrügt man das Gute, indem man sich möglichst weit von ihm entfernt, das Böse, indem man hofft, durch seine Höchststeigerung es machtlos zu machen. Vorzuziehen wäre also hiernach der zweite Fall, denn das Gute betrügt man immer, das Böse in diesem Fall, wenigstens dem Anschein nach nicht.


【和訳】

全ては虚偽であり、嘘である。即ち、まやかしや目くらましの最低の基準を探すこと、普通の状態に留まっていて其の最高の基準を探すこと。最初の場合には、人は、善を求めるこを余りにも簡単に、楽に、容易にし過ぎたいと思うことによって、善を欺き、余りにも不利益な戦闘条件を設定することによって、悪を欺くのである。

二つ目の場合には、人は、善を欺くのであるが、それは、従い、一度ならず地上的なものの中で善を求めて努力をすることにより、善を欺くのである。三つ目の場合には、人は、善を欺くのであるが、それは、出来る限り、善から遠く離れることによって善を欺くのであり、また悪が高い地位に登ることによって、悪の力を喪失させることを望むということによって、善を欺くのである。

このなかからどれを選ぶかといえば、望ましいのは、従い、二つ目の場合であらう。何故ならば、善を、ひとはいつも欺き、この場合には悪を、少なくとも見かけ通りに実際にもそうであるように、欺かないからである。


【解釈と鑑賞】

カフカという人間の思考のあり方とその順序は、面白い。

これら3つの結論は、いづれも最高の、最上の、最善の結論ではないが、しかし、相対的に3つのなかから選ぶとすれば、二番目の結論がいいという結論をいっていて、この結論は、わたしたちの日常的な努力そのものになっています。

この箴言を読んでいて判ることは、カフカというひとは、やはりまづ言葉のあることを信じている、信用しているということです。その上での、この3つの論でありませう。

しかし、他方、カフカという人間の誠に辛辣なところは、これら3つの論理もすべて虚偽である、嘘であるということを言っていることなのです。実は、これがカフカの一番言いたいことでありませう。

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