2014年1月25日土曜日

【カフカの箴言1】


【カフカの箴言1】


【原文】

Der wahre Weg geht ueber ein Seil, das nicht in der Höhe gespannt ist, sondern knapp über dem Boden. Es scheint mehr bestimmt stolpern zu machen, als begangen zu werden.


【和訳】

本当の道というものは、一本の綱の上を行くものであって、その綱は高いところには張られていず、地面ぎりぎりに張られているものなのだ。道は、その道を踏破するというようよりは、むしろ、間違いなくけつまづかせるように見える。


【解釈と鑑賞】

この道は、いかにもカフカらしい。

普通ひとは、大言壮語風に、ようしこの道を極めるぞとか、千万人行かぬとも我唯一人行かむとか、何かこう難しく、難儀で、悲憤慷慨の体を連想させますが、カフカの道は実に平凡で日常的で、ありきたりの、何の変哲もない道です。

綱のようなものがという着想が、一本の道を連想させて秀逸ですが、それを高いところには張っていないのだと言って、読者の連想を引っくり返し、地面にあって、ひとをこけさせるものだというのは、いや、多分これはカフカは皮肉とすら思っていなかったことでしょう。

平々凡々たる事実の道、道の事実について語ったものでありましょう。


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